令和の日本型学校教育に 小正月行事どんど焼きは最良の地域教材 ノウルーズ国際デーとも連携

  NPO法人地域資料デジタル化研究会の小正月行事「どんど焼き」の全国・国際調査プロジェクトは、中央教育審議会が1月26日発表した「令和の日本型学校教育」の構築に関する答申を歓迎するとコメントを出しています。

 この答申によりますと、2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿として、学習指導要領前文において掲げた「持続可能な社会の創り手」の教育を着実に実施しながら、世界がSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいる中で、ツールとしてのICT(デジタル情報通信技術)を基盤として、 誰一人取り残すことのない,持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けて取り組むことを前面に掲げました。
(出典:中央教育審議会答申サイト https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm)

 デジ研の小正月行事どんど焼きの全国・世界調査報告では、平成28(2016)年版において、日本の小正月行事の現代的な意義付けをこめて、「小正月行事は地域住民が集落の持続可能な発展を願い、コミュニティの繁栄と生命の再生への祈りを儀礼化した地域文化遺産」と定義いたしました。つまり、新春を迎える小正月行事の本質は、(1)自分たちの集落そして子孫の持続可能な繁栄への世代を超えた切実な祈りにあります。その祈りは新たな1年の「人々の無病息災・子孫繁栄」、「農林漁業など地域の生業(なりわい)の豊穣と繁栄」、「地域の防災(厄災祓い、悪魔祓い)と安全」−の3つの祈りで構成されています。(2)小正月行事は子どもたちが中心となり、地域の大人たちが協力して、祭りを成功へと導いています。さらに行事の締めくくりとして、(3)住民が一堂に会して「どんど焼き」の火を囲み、人々のきずなを確認するコミュニティ行事になっています。この行事は全国各地で数百年の伝統があります。
 以上の小正月行事の3つの特徴は、国連の提唱する「社会の持続可能な発展、開発に何が必要なのか」というSDGs要件の核となる部分をはっきりと提示しています。

   以上の観点を踏まえると、中教審の掲げた「令和の日本型学校教育」にとって、古代からの伝統であり、現代的な関連性がある『国民行事としての小正月行事』は特別な意味付けがなされるべきであります。小正月行事は、よりよい未来への集団の旅に「決して誰一人取り残さない」という令和の日本型学校教育の決意を強化するための機会となるものです。さらに小正月行事と類似するノウルーズをはじめとする世界各国の行事と連帯することで、国境を越えてコミュニティを結びつける国際理解のための最高の地域教材と言えます。

   既に教育の現場では、小中学校学習指導要領(平成29年告示)が平成32(2020)年4月1日から順次施行されています。その前文には「これからの学校には,一人一人の児童が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓ひらき,『持続可能な社会の創り手』となることができるようにすることが求められる」と示されています。これらの目標を達成する上でも、地域の子どもたちが担ってきた小正月行事は、最良の学習教材となります。
 特に道徳教育の分野においては、「人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,豊かな心をもち,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造を図るとともに,平和で民主的な国家及び社会の形成者として,公共の精神を尊び,社会及び国家の発展に努め,他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人の育成に資することとなるよう特に留意すること」という目標がそのまま、小正月行事の趣旨の中で実現されています。

   以上の結論は、デジ研の18年に及ぶ小正月行事研究の成果として、ひとつの到達点であります。その成果の一つとして、小正月行事を持続可能な開発のための教材とするプランを作成いたしました。次項で詳細を示します。 (2021年2月15日更新)  

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