小正月行事「どんど焼き」の全国・国際調査集計(令和6年版)を公開しました
/ 特定非営利活動法人地域資料デジタル化研究会は2月10日、恒例の小正月行事「どんど焼き」の全国・国際調査集計令和6年版を公開いたしましたので、ご利用ください。
本調査は、日本国内および世界の新聞社・放送局など報道機関や公共機関のWEB版に掲載された記事などを主な情報源とするキュレーション(Curation)というIT手法によって、日本の小正月行事を中心とする「どんど焼き」など火祭りとその関連行事の実施状況を、国内外で調査し、毎年その成果を本サイトで無償公開しています。
調査は全国47都道府県の集落を単位としたコミュニティでの祭事の実施状況を表形式で収録しております。また、アジアから欧州までユーラシア大陸の各地で行われている日本の小正月行事と同じ趣旨の火祭り行事も収録しております。公開しているデータ数はおよそ900件となります。
2024年のトピックスとしては、新型コロナウイルス禍のため、中止、縮小と多大な影響を被っていた全国の小正月行事は、今年からほぼコロナ禍以前の形へと、4年ぶりに平常開催に復帰したところが目立っています。新型コロナウイルスの感染法上の分類が昨年2023年5月から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられ、感染症対策が緩和されたことを受けての動きです。
一方で行事開催を見送ってきたことによる空白期間の長期化で、全国各地の住民が受け継いできた伝統のノウハウが忘れられたり、さらに住民の少子高齢化により、行事の担い手がいなくなり、コロナ禍がきっかけとなり、行事そのものの廃絶に追い込まれている事例も見受けられました。
1000年以上の歴史をもち、日本3大奇祭といわれる岩手県奥州市の黒石寺(こくせきじ)の伝統行事「蘇民祭(そみんさい)」が今年2月17日の4年ぶり開催を最後に、2025年からは執り行わないことが決まりました。主催者の黒石寺は「関係者の高齢化と担い手不足によって祭りの維持が困難になった」と発表しました。
その中で、新たな動きとして、山梨県甲府市では県立大学の学生らが地域社会でのフィールドワークとして、担い手の不足で継続が困難になった小正月行事どんど焼きの開催に協力し、カラフルなおもしろまゆ玉団子の開発やマシュマロ焼きなどの提供で子どもたちの人気を集めました。
福島県双葉郡広野町では、小正月行事の酉(とり)小屋と現代アートのコラボに国内外のアーティストが参加しました。同町は交流人口を増やすのを目的に、アートによるまちづくりを進めており、その一環として「アーティスト・イン・レジデンス」の企画に応じたドイツと山形県在住の作家2人が、伝統行事「酉小屋」に合わせて作品を展示し、1月8日の夜明け前に雪の積もった田んぼで焚き上げられました。
こうした動きは、時代に合わせた手法を取り入れて、伝統文化を守り、地域振興を図る試みで、今後全国に広まることが期待されます。
一方、読売新聞オンラインによると、元日の能登半島地震で被災した集落では正月、小正月の伝統行事はほぼ中止においこまれています。ユネスコの無形文化遺産で、節分の2月3日に予定されていた能登の伝統行事「アマメハギ」が地震の影響で中止となりました。石川県能登町と輪島市に伝わる行事で、神が家々を巡って新春を祝い、地域の災厄を払う。能登町では秋吉地区など4集落に受け継がれ、節分に鬼のお面や蓑みのを身につけた小中学生が集落の家を回り、人々の怠惰を戒める内容です。
今年は被災した家も多く、4集落全てが行事を取りやめた。各集落を束ねる秋吉地区アマメハギ保存会の会長は「こんな時だからこそ行事をやって悪魔に『出て行け』と言いたいが、さすがにやれんわ」と取材記者に語ったということです。
また、北陸地方の小正月行事火祭りでは、元日の能登半島地震から間もないこともあり、早期の震災復興や災害のない一年への祈りを込めてお焚き上げが行われていました。
2024年の小正月行事「どんど焼き」日本全国・国際調査集計一覧のデータ更新では、国内では、宮崎県東臼杵郡美郷町(みさとちょう)の神門(みかど)神社では、1300年前に滅亡した百済から逃れた王族が美郷などの地に移り住んだ伝説を受け継ぐ「師走祭り」。長野県松本市の中央商店街で行われた「塩取り合戦」、沖縄粟国島の伝統行事「マースヤー」、沖縄宮古島の旧二十日正月祭(パツカショウガツ)と獅子のクイチャー踊り、熊本県阿蘇市の阿蘇神社「火振り」、京都福知山の鬼をお多福などに変身させる三鬼打ち神事などの行事を新たに採録しました。
美郷町の「師走祭り」は唐・新羅の連合軍に敗れた百済の王族禎嘉(ていか)王と長男の福智(ふくち)王が宮崎に亡命したという伝説に基づく。王族の父子が年に一度神門神社で再開し、古式に則り旧暦正月を過ごすという古代ロマンに満ちた、燎原の火のように燃え盛るスケールの大きな行事です。
海外では北マケドニアでユリウス暦の新年に開催されるベブチャニ・カーニバル(Vevchani carnival)などを採録しました。日本のナマハゲと同様の“オニ”の仮面を付けてシャギー(ふさふさ)な衣装で仮装する行事ですが、村人は年齢制限がなく、誰でも恐ろしげな悪魔や思い思いのキャラクターの仮面をつけて参加できるのが特色です。人々の変身願望を満たして村の通りを練り歩く伝統行事で、最後にマスクを焚き上げて打ち上げとなります。
その他、既存の行事データも随時、補足情報を更新しています。<b
…続きは「2024年版日本・世界調査報告」のページを御覧ください。(2024年3月11日更新)<